飛行機雲



「お前を待ってたんじゃないからな!」

正門前に見知った人影を見つけて駆け寄った。 夏も終わり、なんて言うのは暦の上でだけで、夕方でもまだ暑い日が続いている。
青い空の下、蝉もうるさい位によくないて、短過ぎる寿命を縮めている。
「10代目を待っていたついでにだな、10代目が笹川と帰るようだったから…」
「うんうん、そーなのな」
慣れた会話をしながら、いつも通りの帰り道を二人ならんで歩き始める。
少しだけ早歩きな獄寺に置いていかれないように歩幅は大きく。
普段は夜遅くまで部活があって獄寺とはなかなか一緒に帰る事が出来ない。
まして、二人きりなんて滅多に無い事だ。
「お前いつまで部活休みなんだよ」
「ん〜、今週中は無いみたい。道具整備だけ」
「ふーん」
たわいもない会話、だけど獄寺と話す時間はオレにとって凄く貴重な時間だ。
すぐに会話は途切れがちになってしまうけれど、獄寺から話し掛けてくる機会は以前より増えた、と、思う。
というか、獄寺の纏っている空気が前より少し柔らかく、丸くなった気がする。
初めて会った時なんてそりゃもう近づいたら直ぐにでも噛み付かれそうな鋭い勢いだった。
そういう奴にはたまに出会う。
俗に言う不良って人達だ。
オレの何が気に入らないのかわからないけど、絡んでくるのには慣れっこだったから上手くかわす方法は知ってる。
だから最初は獄寺ともそうなるのかと思った。
けど、獄寺といるうちにそんな人間とは何かが違うって感じていった。
オレやクラスの奴らにはツンツンしてるけど、ツナにはスゲェ笑顔で接してるし、本当は良い奴で、でもちょっと恥ずかしがりで仲良くなるタイミングが掴めないでいるんじゃないかと。
何よりコロコロと変わる表情の豊かさに興味をひかれていた。
それからオレはしつこい位に獄寺に話し掛けた。
相手にされていなくても負けじと側にいた。
時折スキンシップも混ぜこんで、怯えた猫を安心させるようにオレは怖くないよって伝え続けた。
その甲斐いあってか、初めのうちは敬遠されていたのが今ではツナが間にいなくても会話のキャッチボールが出来るようになった。
オレに向ける表情も幾分柔らかくなってきた。
他の奴に言わせると、どこが?って感じらしいけど。
じっくりゆっくり時間をかけて打ち解けてきた。
その時間分、ずっと獄寺を見てきたんだ。
変化していく獄寺を。

一度、獄寺の手に触れてしまった事がある。
故意にではなく、飲み物を渡す瞬間に少し指先が触れた程度だけれど。
白くてしなやかな細い指、冷たい物を持っていたからか暑いオレには心地よい冷たさで、気が付いたら自然と気持ちいいと口から漏れ出てしまっていた。
自分で口にした事なのに驚いて、同じく驚いていた獄寺を置いて適当に言い訳を残しオレはその場から逃げ出した。
指先は信じられない位に熱を持って、少し走るのくらい慣れっこな筈の心臓は、立ち止まってからも早鐘が鳴りやまなかった。

それ以降、お互いその時の事は口にせずに、何も無かったかのように過ごしてきた。
でも、時折見せる笑顔や、サボって眠っている時の幼い顔を見ると心の奥の方がじわじわと熱くなった。
それからずっと、この生まれて初めて感じる熱について考えてきた。
悩みに悩んで、今は少し答えが見えてきた段階だ。
きっと、あと一歩。
「おいバカ本!何ボーッとしてんだよ、道こっちだろ」
獄寺に呼ばれてオレの意識は現実に戻ってきた。
「あ、あぁ、ワリィ」
帰り慣れた道なのに考え事をしていた為、足はいつもと違う方向に向いてしまっていた。
慌てて獄寺が居る方の道に方向転換をする。
「今頃になって頭の夏バテか?」
意地悪く言う獄寺の幼い様な笑顔に、返そうとした言葉は喉の辺りで突っ掛かって出口を見失ってしまった。
「……獄寺、反則」
「はあ!?何がだよ」
変わりについて出た言葉に獄寺の顔はみるみる仏頂面になっていった。
その変化がまた面白くてつい口元が緩む。
「お前、変」
確かにそうかもしれない。
こんなに獄寺の表情に心動かされて。
こんなの、まるで。

そうしている内にも歩みは続き、町並みを抜け少し開けた場所に出た時。
「あ!ほら見ろよ、獄寺後ろっ!」
オレの目はあるモノを捕えた。




指差した方向に顔を向けた獄寺から、あー、という声が漏れた。
「飛行機曇が縦にのびてるぜ!スゲェな!」
「あぁ」
大興奮なオレを余所に、いたって普通な態度のまま素っ気ない返事をする獄寺。
「何?あんまりカンドーしねぇ?」
こんなにも澄んだ空模様に一本の白い線が綺麗に、しかも珍しい事に横にではなく縦方向に延びているのに。
「別に、見た事あるし」
そう言われると確かに見た事が無い訳ではない。
そんなにはしゃぐ様な歳でもない。
じゃあ、この胸の高鳴りは何だろう。
思い付くのはもう、ただ一つしかなかった。
「オレは初めて見たぜ。獄寺と一緒には、初めて。」
なんか嬉しいなと漏らすと、言ってる意味がよく分からないといった表情で獄寺がこちらを窺う。
何気ない事でも、獄寺と一緒だとこんなにも特別で幸せな気持ちになれるんだ。
「これって…恋かな?」
うん、きっとそうだ。
「はぁ?!」
眉間を寄せた顔から一転、緑色の瞳が大きく見開かれ、驚いた表情になる。
この気持ちを正直に伝えたら、今度はどんな顔をするんだろうと気になってしょうがない。
もしかして困らせてしまうかもしれない、怒られるかもしれない。
でも、ずっとこの気持ちを黙っているのは行動派のオレには難しそうだ。
「あ、オレ急用思い出したから先行くなっ!」
また明日、そう言い残しポカンとした獄寺を置いてオレは一直線に走り出した。
今にも口をついて出てきてしまいそうな気持ちだったけど、明日まで我慢して改めて伝えたいと思った。
ちゃんと真剣だって。
獄寺が好きだと。
鼓動の高鳴りがこんなにも嬉しく感じたのは、生まれて初めての事だった。

明日は君の誕生日。


end

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獄寺誕生日企画☆山獄第2弾です。
まず、ごめんなさい!!バカが文書いてしまってゴメンなさい。DO GE 座。
思いっきり文章力はありません。ビックリする位です。
本当はショート漫画にする予定だったのですが、漫画描いてる時間無い、気力も無い(ダメじゃん)で、文を書いてみたのですが。
ケータイで書いていたので、いつでも出来るので時間的にはとっても楽でした。
途中携帯が壊れて新しいのにしたり、使い方覚えるのに頭使って文に手がまわらなかったり、
変換速度の遅さにかなりイラッときたり(現在進行形)で、間に合うかギリギリまで不安でしたが、何とか形に出来ました。
苦肉の策に挿絵で獄を。
山本の心情を細かく表現するのにWEB漫画では限界があるので、そういった意味でも形に出来たのは嬉しい事なのですが、
獄寺誕生日企画なのに、獄寺メインじゃないっていう・・・祝えてないですね、今更ですが。あは。
では、読んでくださった方、本当にありがとうございました!!