(ヴィヴィトの原稿より  )・・・・02.6月

みんなちがって  みんないい

(金子 みすゞ 詩集より)

☆ 子供の障害について、学年集会で話しました。☆

きらは、重度の自閉症です。今年、市内の特殊学級に進学しました。

この、特殊の進学についても、私をはじめ担当医や担任は教育委員会からは『養護妥当』の判定がくるだろうと考えていました。しかし、意外な事に『特殊妥当』の判断。これには、みんな驚きました。(今でも、七不思議でしょうか?)

春休みからG中学校に通い、担任の先生と生活や授業(課題)内容のプログラムを立てて、まずは一番大切な先生との人間関係の確立を図りました。どうにか、先生の指示に従うようになって臨んだ入学式。予行練習の時も、走り出しが見られたようでした。

入学式本番当日。5分から10分間隔で「ナッー!!」「ナッーナッーナッー」の奇声。参列した二年生、三年生からは「なんだよあれ!!」「ナッーナッーだって」という声とともに、クスクス、ゲラゲラ、中傷の笑いが起こります。その笑いは暫く続きました。しかし、入学式も中盤に差し掛かると、もう誰も笑いません。みんな、きらの障害が重いことに気づいたからでしょうか?

新学期が始まって、きらも少しずつ学校に慣れてきました。年度始めは、保健室関係の行事が多くなります。そこで、保健の先生とコンタクトをとりました。まずは、保健の先生にきらを理解してもらう事が大切だと思ったのです。

保健室にいき入学式のときの話をしました。保健のK先生は実直な方でした。「きらくんが、早くこの環境になれるためには、私たち教師サイドはどのようにすればいいかしら?本当に勉強不足で失礼ですけれど、きらくんのような自閉症のタイプはこの学校でも初めてなの。毎年、自閉症のお子さんはいらっしゃるけれども、大概みんな話してコミュニケーションがとれるし、勉強面で少し遅れているくらいで健常のお子さんとあまり違わなかったので。私たちもお母さんからいろいろ教えて頂けたらと思って」

そこで、まずは自閉症の概論について話し、今まできらに対して行った家庭での取り組み、彼らから見た私たちの世界などを話しました。そして、各検査に関する打ち合わせをしました。

それから、1週間ほどしてきらの話を生徒にしてほしいと一年生の学年主任の先生から話しがありました。「保健のK先生からいろいろお聞きして。本当に、もしよかったらきらくんの事を生徒たちに話していただけませんか?入学式のインパクトが強くて、正直、子供たちもとまどっているのが現状です。きら君の存在はわかっていて、障害があるから、、と解っていても、実際問題、心から受け入れられない。自分たちG中学の同じ1年生の仲間として受け入れていない。これでは、きら君や他の生徒のためにも良くないと思います。正直な話、今の子供たちはみんなと同じでないと不安なんです。ただ、話していただけたからといって、話をきいた生徒がみんなきら君の事を理解するとは限らないし、話したからといって生徒たちが何かするわけでもないとは思いますが。それでもよければ、話していただけませんか?」もちろん、私としては二つ返事でOKしました。

 

 話した時間は、道徳の時間。体育館で一年生全員と先生方に話ました。

話した内容は、・・・。

 

1)、自閉症の事を知っているか?

一昨年の藤井ふみやや、ともさかりえなどのドラマを引用して、あと、各小学校の特殊学級に自閉症のお子さんがいた事を上げて。・・・(特殊学級に自閉のお子さんがいた事は知っていても、自閉症だったとは知らないというのが大半の現実でした。)

 

2)、自閉症は脳の発達障害である事。

芸能人がよく言う「私は自閉症でした。・・・」という引用は心因的な事を指しているので間違っている事。自閉症は、心因障害ではなくて、生まれつきの脳の発達障害である事。

 

3)、脳の発達障害について。

主に、情報処理関係の伝達に関する障害が有り、その障害の部分や程度により、同じ自閉症にも症状に違いがあること。これは、『りんご』の認知に関する具体例を挙げて。

 

4)、自閉症の問題行動について。

模倣力の欠如や不足、こだわり、常同行動、奇声、自傷、他傷、多動、などについての説明。入学式の様子を具体例として引用。

 

5)、模倣力が大切な事、また、それがない事の大変さ。

模倣力があることで人間はいろいろな事を学んでいく。世間や学校教育は、この模倣力があることを前提に進められている。きらは、この模倣力がないために普通の人が簡単にできる事を、何倍も練習しないとできない事。(具体例として、箸を使うための練習を6年間やった事。そのレッスン内容。 ラーメンを噛み切る練習について。)

 

6)、言語コミュニケーションがない事

自分の意思が伝えられない。もどかしさ。これらが自閉症の問題行動(奇声や多動、他傷、自傷)と結びつく事。生徒たちに、『トイレに行きたいけど伝えられない時はどうするか?』など、質問して。

7)、きらは私たちの世界をどのように感じて過ごしているか?

認知能力や模倣力、判断力に障害があるので、私たちの生活する空間を同じように感じて過ごしているわけではない事。では、どのように感じているのか?

 

入学式の時は・・・中学生になるという事が理解できていないし、入学式の意味が理解できていない。そのために、奇声などの問題行動をおこした。また、知らない人や知らない場所に、一人で来た感じ。これは、例えば、みんなが異文化のアラビア語圏の市場に一人ぽつんと置かれた状態と同じである事。

 

慣れてきたら(小学校の時は)・・・簡単な単語や言葉が理解できて、また、マークなどの意味もわかってくる。生活習慣や自分のやる事が少し理解できる。これは、みんながアメリカの町に一人ぽつんとおかれた状態である事。

 

8)、自閉症との付き合い方について。

別紙にプリントを配布した。特に自閉症は『恥ずかしい』という気持ちが理解できないので、エチケット面においてみんなが嫌だと思うことをやってしまう事があるかもしれない。その場合は、きちんと注意する必要がある事(直接言えない時は、先生に伝えて欲しい事)。話せなくても、話は聴いている事。

 

9)、身体障害のノーマライゼーションと知的障害のノーマライゼーションについて。

 

これら、9項目を中学生に分かるように噛み砕いて話しました。

最後に、この話を聞いたからといって別に何か特別な事をしなくてもいい事。

無理をする必要はない。自分で感じたまま行動してほしい事。ただ、もし『あいさつをしてもいいかな?』と思ったら、名前を呼んでもらうと、本人はより分かりやすいかもしれないという事も話ました。

 

スピーチ終了後のアンケート(一部抜粋)!!

        人は、人と人が支えあってできている字なので、人は人が支えあって生きていくしかないのだと思います。

 

        特別な事はしないで関わっていく。もし障害があって困っている時は、声をかけたりしてあげたいと思う。障害を持っていても、いなくても特別扱いしない。「バリアフリー」とか言っている人がいるけれど、まず「心のバリアフリー」ができるようになり、たくさんのいろいろな人と関わっていきたいです。

        G中の1年生はみんな違う人だけど、自分の気持ちも相手にわかってもらえ、相手の気持ちもわかるようになりたい。「みんなちがって、みんないい」と本当に思えました。また、さまざまな人に対して、困っている人がいたら助けてあげられるような気持ちになった。

 

        いろいろなところで障害のある人に会うかもしれないけど、その時はしっかりその人のことを考えていきたいし、その時できることを、やれたらやっていきたい。

 

        自分たちが当たり前にしていることをできない人もいるってことをあらためて知らされました。「箸を使うだけでも6年」なんて思わずに、はしを使うことがきらちゃんにとってとても大切だって、何かをできるようになることが大切だって、受け止めることが大事だと思いました。

 

        きらちゃんは僕たちと少しだけ違う。だけど、きらちゃんはみんなになるべく近づこうと頑張っている。だから、僕たちはきらちゃんのことをもっとよく分かってあげる事が大切なんだなあと思った。違っていたって僕たちときらちゃんは同期の桜。1−3の大切な仲間なんだ。これからもきらちゃんと仲良くしていきたい。

 

        みんなと話せないかもしれない。でも、その病気のことをよく知り、どういうふうに接するか、その人の気持ち、動作などで表す感情を1つ1つ考えて、なるべくその人のことをわかってあげることが大切。

 

        人一倍がんばっているんだなあと思いました。今日の国語の時、先生が「十人十色」といっていたのはこのことかなと思いました。「35色」みたいに一人一人いい「色」になれるといいです。

 

       どんなにつらくても、みんなを助け、一人はみんなのために、みんなは一人のために協力し合って頑張っていこうと思います。そういう関係をつくっていきたいです。

 

私のつたない話でこれだけの事を考えてくれるなんて感動でした。でも、これでよかったのか?きらのことだけでよかったのか?疑問、反省が私の心に残りました。

 

 

そのあとしばらくして、今度は二年生の学年集会で話ました。きらが野外活動に二年生と一緒に参加する事になっていたので。

 

二年生は、一年生の内容の他に

 

1)、障害は軽くても重くても本人のつらさや大変さは同じである事。努力をしている、していないに関わらずに考えて欲しい事。

 

2)、特殊学級、普通学級にかかわらず、認めて欲しい事。理解して欲しい事。

 

3)、障害がある、障害がない。みんなと同じ事ができる、できない。という事で、その人を判断しないでほしい。みんなちがってあたりまえ!!・・の気持ちでいてほしい。

 

以上の三点の項目を、弟のきらに対する思いや弟の同じ学年の普通クラスで行動がワンテンポ遅い子に対する友達の反応に関する弟の気持ちなどを例にして話しました。

 

 

スピーチを聞いたあとのアンケート(一部抜粋)

 

        今まで私は自閉症のという障害は全然知らなくて、今日、初めて自閉症の事を聞きました。話を聞いて知っておけばよかったと思いました。今の人たちは障害の事をしらなすぎだと思うから、もっとちゃんと理解して、助けていこうと思いました。

 

        今日の話を聞いて、入学式の時に笑ってしまって、自分が情けなくなりました。

 

        障害を持つ事がどんなに大変な事かわかりました。「キャーキャー、ピーピー」ただ騒いでいるだけだと思ったけど、その一言一言に、その人の思いが込められているなんて、、。うるさいだけだと思っていた私が情けなくなりました。(同じ人間なのに分かってあげられなかった、、。)もし、「いやだなあ、、。」と思っていた私が、初めから、その大変さに気づいていたら、、。「いやだなあ」という、この気持ちは、彼らにとっては、とても冷たくて、悲しい言葉なんだなあ、、。と、思いました。

 

        自閉症の兄を持った弟の悩み苦しみ、幼稚園でのA子ちゃんの事などが、感動的というかよくわからない気持ちになりました。

 

        今日の話しを聞いて、みんなが平等に生きれる世の中にしたい。みながみな人のことを思って生活できる社会にしていきたい。

        今後、障害児にあっても、特別視せずに、普通の人として接することができようになりたい。

 

        今日は、最初から最後まで、すごく心に残りましたが、とくに心に残ったのは弟くんが話した言葉です。私が弟君だったら、そういう事をいえるかどうか考えると自信はありません。そういう優しい弟君みたいに考えられるようになろうと思います。

 

        とにかく私たちにできる事は、たくさんの障害を理解することだと思います。今まで、自閉症のことは私も全然知りませんでした。だから、もっと世の中の人も「こんな病気があるんだ」と知る事が大切だと思いました。そしたら、いろいろな人と人が一緒になって助け合えると思います。だから、私も理解していきたいです。

 

        自分が落ち込んでいる時、世の中には自分の倍以上努力をして、社会に出ようとしている子がいることを思えば、励ましになると思います。きらくんががんばっているのなら、自分もちょっとはがんばってみようと思います。

 

        きらくんの立場を僕たちに置き換えて話してくれた。いきなり何も通じない人のところに行った感じという話しが、一番苦しみがリアルに出されていて、とても悲しくて

苦しくなった。これからは、まず、どうすれば相手にうまく伝わるか、自分をその人の立場において、できるだけ相手の気持ちを理解して、友達にも、どんな人にも相手の事を考えて行動したい。

 

すばらしいアンケートをすべて掲載できない事が残念です。「中学生は、自分の自己確立でいろいろ大変な時期だから、自分の事で手一杯の時期だから、ノーマライゼーションを考えた交流もいりません。きら本人の力を伸ばしたいので。」入学当初の私の考えです。今にして思えば、自分で何も努力もしないで、彼ら、彼女らの事を見ていた自分がはずかしくてなりません。

 

たった2回のスピーチで、200人の強い味方ができました。

 

後日談!!

中総体激励会の一コマ。各部活動がステージに上がり、一人一人名前とポジションが紹介されます。ギャラリーの生徒からは、掛け声が飛び交います。いよいよ、我がW卓球部!!きらは、先生と一緒に壇上にあがります。立ち位置に自分で行き、お辞儀!「次は、きらくん。Cグループです。」その時、ギャラリーから「きらくん!!」「きらちゃん!」「がんばれ!」の掛け声が!!きらもG中学の一員なのだと実感しました。