08年

河北新報朝刊『座標』 一月号(1月8日掲載)


『障がい者の自立』

新しい年を迎え、親である私の願いは、家族の健康とそれぞれが充実した日々を過ごせるようにということです。特に、養護学校高等部三年の自閉症の長男は、今年、学校から社会に出て行きます。まさに、社会人としての第一歩です。昨年、猛暑の夏から秋にかけて三カ所の福祉作業所で実習を行いました。知的に重い障がいがあり、話せず、その上、知人がいない、初めての場所での実習は大変だったと思います。その後、四月から通所したい作業所を自分で選びました。確かに、進路先に関して、親の希望や考えもあります。しかし、家庭の実情と折り合いをつけ、できるだけ彼の気持ちを尊重できればと考えました。何よりも彼の人生なのです。
 「この子は大人になっても自立することはありません」。私が主催する勉強会に参加した保護者の言葉です。子どもの障がいが重く、養育にさまざまな困難を伴い、多くの支援を必要とすればするほど、自立をイメージすることが難しくなります。日常の養育に追われ、考えることすらできないのも現状でしょう。あるいは、自立を何事も自分一人ですることと考えているのかもしれません。
 果たしてそうでしょうか。肢体不自由の車いす、近視の眼鏡のように、障がいに応じたさまざまな支援ツール(道具)を使い、自立した生活をしている人はたくさんいます。支援ツールが世間に溶け込んでいれば、それを使うことに違和感がありません。しかし、障がいによってはツールが人そのものになることもあります。いずれにしても一番大切なのは、障がいの有無にかかわらずその人らしく生きる、主体的に生き、そして、生活するということです。それが自立という言葉の意味なのだと思います。
 障がいのある人が将来(現在も含む)それぞれのスタイルで自立するためには、「one on one(一人に一つ)」の支援とその支援を送り出す体制が必要になります。そのためには、まず、親が子どもと主体的にかかわることが大切だと思います。子どもが自立するための生活力を身に付けるベースは家庭にあります。しかし、親をはじめとする家族の力には、当然ながら限界があります。だからこそ、行政や医療、作業所(人によっては一般の企業)、ヘルパー事業所、幼稚園(保育園)や学校、地域住民の理解など、地域の力が必要不可欠であり、それらの連携が大切になります。人に支えられた障がい者の自立が進む社会は、互いの違いを認め、尊重する穏やかで心豊かな社会になると思います。