河北新報朝刊 座標二月原稿
『適切な教育支援』
「私(保護者)、学校の先生方からモンスターペアレントと言われているかもしれません。子どものためだから頑張れるけれど、正直、悲しいです。切ないです」。これは、電話などで相談を寄せた障がい児の保護者の言葉です。「モンスターペアレント」とは、自己中心的で一般常識とはかけ離れた要求を学校に行う保護者のことを指します。よく知られていない障がいや見えにくい障がいの場合、生活のさまざまな場面で誤解されやすく、適切な支援、指導を得難いという現実があります。それは、将来、自立するためのスキル(技術)・力を習得する学校でも同じ状況です。だからこそ、冒頭の保護者は、子どもの困惑やつらさを肌で感じ、子どもの特性を理解した指導、支援を願い、学校に伝えているのです。それは「モンスターペアレント」とは、全く違うものです。
では、冒頭の保護者の危惧(きぐ)はなぜ起こるのでしょう。一つは「モンスターペアレント」という言葉の出現で、建設的な意見提示すら揶揄(やゆ)する風潮が出てきたこと。さらに、それ以上の大きな要因として、保護者と学校の間で生じている教育(養育)方向の微妙なずれです。それがお互いを疑心暗鬼にしているのではないでしょうか。この教育方向のずれの原因として、どちらかが子どもの障がい特性を理解してないことや理解はしていても、子どもや事象に関する見解・分析の基準に違いがあることが考えられます。
昨年四月、特別支援教育が学校教育法に位置付けられました。それに伴い従来の「個別の指導計画」とは別に「個別の教育支援計画」の導入が始まりました。
これは、短期間設定で、学校内のみで使用する「個別の指導計画」とは異なります。例えば、作成に関し、在籍クラスや知的な遅れの有無に左右されないこと。学校以外の福祉、医療、労働等のさまざまな機関との連携と活用を想定していること。長期目標、短期目標、具体的支援策が長期的な視点に立ち作成されることなどです。これにより、保護者経由の他機関との連携から、より多角的視点で子どもを把握でき、自立に向け、適切な指導と支援が得られます。そのためには、「個別の指導計画」よりもさらなる保護者との連携が必要となります。「個別の教育支援計画」がうまく機能すれば「教育方向のずれ」は起きず、前述の保護者の悩みは杞憂(きゆう)となります。さらに、情報の共有により、関連機関同士がサポートスキル(技術)を伝え、高め合う側面もあります。
ただ、残念なことに、現段階で実施の義務化は特別支援学校のみであり、小・中・高校では必要に応じて、幼稚園・保育園での実施は明記されていません。
果たして、それでよいのでしょうか。特別支援学校以外では、特別支援教育を知らない先生方が多い。専科制の授業形態で、先生方がチームで動く意識が低いなど、より複雑な環境だからこそ実施する必要があります。しかし、現場の先生方は忙しい。「個別の指導計画」だけでも手いっぱいです。従来の「個別の指導計画」が「個別の教育支援計画」の短期目標と重なると分かっていても大変なことには変わりはありません。だからこそ、優先順位を見極め、記載項目の調整を図り、より具体的内容にする必要があります。また、作成したら必ず実施と評価が必要です。それにより、次への移行・計画立案がスムーズになります。長男の通う光明養護学校は、年二回の個人面談と学期ごとの通信票で実施と評価を行っています。
保護者や教師などの支援者がより主体的になり、率直に意見交換することが適切な教育支援の基礎になると思います。