A.Berg(アルバン・ベルク)

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 音楽史の中のアマチュアリズムといえば、ムソルグスキー、アイヴス、そしてこのアルバン・ベルク(1885〜1935)の名があがるだろう。彼らは伝統的音楽形式やその時代の空気に左右されることが少なく、強烈な独自の言語を創設する。ベルクもその例に漏れなかったが、彼のそれは何人かの作曲家の折衷とその混ぜ合わせ、それに彼自身の音楽性を加味したものである。彼の音楽に一貫して流れるのは、ワーグナーのトリスタン的要素である。ピアノソナタからヴァイオリンコンチェルトまで、叙情12音技法と言われるこの作曲家の叙情性は、ワーグナー的な要素に満ちているのだ。
 そしてベルクにとって最も大事な作曲家がいた。彼の師匠であるシェーンベルクである。グールドは、シェーンベルクの12音技法を学んだベルクのことを「水を得た魚」と表現しているが、これはまさにその通りで、ベルクの音楽は以上三つの要素(即ち、ワーグナーのトリスタン的要素、シェーンベルクの12音技法、ベルク自身の音楽感)に支えられているといえる。
 ベルクは12音技法によって「過去」表現しようとした。いや、表現せざるをえなかったというべきだろうか。彼は友人であり同じくシェーンベルク門下のウェーベルンが12音技法で「未来」を表現したのとは対極であった。それは彼の人柄やアマチュアリズムによるのかもしれないが、それがために彼の人気が高いのだと思う。要するに、ベルクの音楽は聴きやすいのだ。12音技法という前衛的技法(今ではもはや古いものとなってしまったが)をもちいているにもかかわらず、旋律が耳に入りやすい。ウェーベルンの交響曲を口ずさむのは困難極まりないが、ベルクのヴァイオリンコンチェルトを口ずさむことは可能である。
 ベルクとウェーベルンの関係は、音楽の時代的な流れをよくあらわしている。ベルクは過去を描いたために将来につながることがなかった。後者はその反対に、未来を描いたために将来の音楽に莫大な影響を与えた。やはり、後世につながるものは「前衛」なのだろう。しかし、「前衛」があるところには必ず「新古典」が存在する。そして、その「新古典」の存在も無視できない。前者の反動が後者であり、その後者の反動の反動がまた前者なのである。「過去」と「未来」とは互いに影響しあいながら歴史を作ってゆくのだ。

 <楽曲解説>

管弦楽・3つの管弦楽小品 op.6
協奏曲・ヴァイオリンコンチェルト
室内楽・抒情組曲
独奏曲・ピアノソナタ op.1
オペラ・ヴォッツェック op.7

・ルル