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我々現代人には理解されにくい現代音楽。その方向性を、古今様々な音楽を通して検討し、来るべき将来の音楽を考える。 | ||||||
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最近のお気に入り 〜気まぐれ更新CD考 D.Shostakovich,A.Schnittke:Piano Quintet ![]() Label:Naxos Piano:Boris Berman Strings:Vermeer Quartet ロシアの大作曲家二人によるピアノ五重奏。これほどまでに濃密な音楽が1000円で聴けるとは、これまたすばらしい時代になったものだ。私の場合はディスクユニオンでの中古買いであったため、300円でこの内容である。演奏の方であるが、値段を抜きにしても上質であり、もし値段も考慮に入れてしまうと、このCDは最高級の一品であるといえる。 ショスタコの第一楽章の盛り上がりは、もはや絶叫である。私はこれを新宿で購入し、帰りの列車の中でCDプレーヤーにかけて聴いたのであるが、列車出発後わずか3分でシートが熱々になってしまった程だ。しかし、もし欲張りがゆるされるのなら、第二楽章のフーガをもっと理知的に処理すべきであったと言いたくなる。三楽章については申し分ない。ラストの強いリズムは演奏者全員の呼吸の一致が実現しているといえるだろう。そして第四、五楽章であるが、私がこの曲を始めに聴いたのはグールドの演奏で第三、四楽章が省略されており、第五楽章がはじめっから快速であったため、第四楽章の続きとして穏やかに始まるこの演奏に少しばかり抵抗があった。しかし、曲が静かに閉じられた時に、私の内にその抵抗がまだ存在したであろうか? 果たして、否である。それはこの曲本来の計り知れない魅力と、この演奏のべっとりとした(しかし曲の最後ではそれを無視することのできる残酷で理性的な)情緒との結合がもたらす何物かによるものであると考えられよう。 シュニトケの音楽はいつも真っ暗である。そしてひとつひとつの音は、その暗い空間の中で光る点だ。即ち、シュニトケの音楽は宇宙なのだ。空間は「間」であり、星は「音」であり、トーンクラスター的効果はまるで「天の川」である。このピアノ五重奏は、その宇宙が最大限に発揮された曲といえる。ピアノによって表現される跳躍の多い主題は、落ち着かない心。BACHの主題によるワルツは、ぎこちなくつまづきながら進んでゆくが、ストリングスの川によって足止めをくらう。川の向こう岸で鼓動する心臓の音は、切り裂くような重音によりかき乱され、やがて宇宙の中に消えてゆく。そして、この宇宙に残るものは目の前に激しく流れるこの川だけ。川は流れを速め、氾濫し、全てを飲み込む。全てが無と化したその時、宇宙の彼方から静かな牧歌が聞こえてきた。牧歌の美しき平安と、宇宙に満ちた不安が入り混じる。不安は平安につられて次第に変化し、最後には協和音となって昇華する。この美しい牧歌は、おそらく先ほどの鼓動の持ち主が、天から歌っているのであろう。宇宙に平安が訪れ、牧歌はその役目を果たし、天へと帰ってゆく。大分宗教じみた表現になってしまった。この曲はシュニトケの母への追悼曲。即ち、平安の牧歌を歌う者はシュニトケの母なのだ。さて、演奏であるが、この曲はとにかく「点」と「音塊」の対比が命である。このCDではそれがよく表現されていて、まさにシュニトケの宇宙を感じさせれらる。テンポの設定も申し分ない。しかし残念なのが、第四楽章がおとなしすぎるということである。第四楽章の「不安」が凶暴であればあるほど、第五楽章の牧歌の効果が上がるのだ。しかしそうはいっても、やはりこの曲の最後にはどんな批評も無意味である。後世に受け継がれる音楽は、同時代人に理解されにくい音楽である。すると、この曲が後世への影響を与えることはないだろうと思われる。それでも私は、この曲を何度も何度も繰り返し聴く。音楽史だけがすべてではないのだ。時代に埋もれた音楽、または将来埋もれてしまうであろう音楽を聴くことは、純粋に音楽を楽しむ上では何の支障もないばかりか、苦しみながら前衛音楽を聴くよりはずっとずっと良いのだ。 音楽を聴く姿勢の本来の姿を思い出させてくれるCDである。 |
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